東京地方裁判所 昭和42年(借チ)2040号 決定
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〔決定理由〕二 ……
1 相手方は、申立人は四二年七月前記田所有に対し本件建物及び借地権を譲渡し、かつ、その建物の引渡を了しており、しかも右田所は本件建物に二階(59.76平方米)を増築した上でここに居住しているのであるから、本件申立ては建物及び借地権譲渡後になされたものであると主張している。右主張事実のうち、本件建物に二階が増築され、右田所が居住していることは認められるが、これをもつて直ちに、既に建物及び借地権の譲渡がなされたと認めることは相当ではない。すなわち、申立人は前記のとおり病気入院し、借財もかさんだ結果、本件建物及び借地権を処分せざるを得なくなり、当初相手方に買取方を交渉したが、金額について折合わず、やむを得ず不動産業者に処分のあつせんを依頼した結果、前記田所との間で売買の予約をし、内金として金一〇〇万円の支払いを受けて漸やく生活を維持してきたものであり、一方田所も相手方の承諾が得られないまま時を過すうち、本件建物を空屋にしておくことは何かと不都合であるため、申立人との話合いにより本件建物を居住できるように増築してて居住するにいたつたものである。右増築の費用は田所において支出しているが、増築工事は申立人の名においてなされている。田所は若し売買契約が履行されずに終つたときは、既に支払つた内金及び増築経費は、申立人から返済を受けることとなつている。以上の事実からみて、本件建物の所有権は未だ田所に移転しているとはいえないのである。従つて、本件申立てを適法と認める。
2 ………
三 そこで、進んで附随の裁判について検討をする。
1 鑑定委員会の意見書によれば、本件借地の更地価格を3.3平方米あたり一四万四千円、借地権価格をその七〇%と認め、昭和四〇年一一月名義書換料が支払われているので、昭和四〇年一一月から現在までの借地権価格の借上り分(現在の価格の二〇%)の一割、すなわち約金一二万二千円をもつて、名義書換料に相当とする金額としている。
2 申立人は前記のとおり昭和三四年に本件借地権を一二〇万円で譲受けたものであり(以下の計算にあたり、当時の土地価格からみて、当時存した建物の価格は殆んど無視して考えることができよう)、これを物価指数によつて換算すると現在ほぼその四割増しの一七〇万円に相当する。また、昭和四〇年一一月六〇万円の名義書換料を相手方に支払つているが、この金額を物価指数によつて換算すると、現在ほぼ七〇万円に相当する。従つて、申立人は本件借地権の取得について、右金額の合計約二四〇万円を投資しているとみることができる。ところで、現在の借地権価格は、鑑定委員会の意見によれば、3.3平方米あたり約一〇万円、六一坪で合計六一〇万円に相当する。従つて、申立人がこの価格で譲渡すれば、差額約三七〇万円の利得を受けることができることになる。この利得の一部は、相手方に還元することが、公平に適するものと考えられる。そこで、本件借地契約は二〇年の約定期間のうち五年を経過したところであるから、まず三七〇万円の四分の三にあたる金額は、申立人において受けうる利得と考え、残額約九〇万円について相手方への配分の割合を定める。本件においては、当事者双方の事情、本件譲渡に関する接渉の経過及びその後の事情等を考慮し、その約六割にあたる金五〇万円をもつて相手方に配当すべき金額とするのを相当と認める。(西村宏一)